WelCome You テーマパークの行列運用:見えない列という発明 – WaitingGeometry
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行列

テーマパークの行列運用:見えない列という発明

要点

  • テーマパークは、列を物理的に短くする代わりに、待ち時間の体感を組み替えることで行列の不満を扱ってきた。
  • 予約券方式(ファストパスの類)は、客を列から解放して別の場所で待たせる「見えない列」を生み出した。
  • もっとも、見えない列で待つ人と通常の列で待つ人のあいだに、新たな公平感の問題が生じる。
  • 行列の演出は、待ちを減らすのではなく、待ちの置き場所と意味を移し替える技術である。

人気アトラクションの待ち時間が「九十分」と表示されているのを見て、それでも人は並ぶ。テーマパークは、待つこと自体が前提の場所だ。だからこそ、この産業は待ち時間の扱いについて、ほかのどの業種よりも多くの工夫を積み重ねてきた。比べてみると、その工夫は二つの方向に大きく分かれる。列の中の体験を作り込む方向と、そもそも列から人を出してしまう方向である。

列の中を作り込む

第一の方向は、待っている時間を「何かしている時間」に変えることだ。デイヴィッド・メイスターの整理によれば、何もしていない待ちは長く感じ、何かに気を取られている待ちは短く感じる。テーマパークの長い順路は、この原理を露骨なまでに利用している。蛇行する通路の壁に物語の断片を配し、映像を流し、小道具を置く。客は気づかぬうちにアトラクションの世界に入りはじめ、待ち時間は前説の一部に転化する。

表示の仕方も計算されている。実際より長めの待ち時間を掲示し、それより早く乗れるようにすると、客は「思ったより早かった」と感じる。先が見えない待ちは長く感じるというメイスターの指摘の裏返しで、見通しを与えたうえで期待をわずかに下回らせる。正直さと演出のあいだの、際どい運用だ。

列から人を出す

第二の方向は、より根本的だ。一九九九年に大手テーマパークが導入した予約券方式は、客に指定時刻を渡し、その時間まで列の外で自由に過ごさせる。戻ってくれば短い専用列からすぐ乗れる。物理的な行列は消え、代わりに「いま園内のどこかで自分の順番を待っている人々」という見えない列が生まれた。

これは一見、誰にとっても得な仕組みに見える。列に縛られず買い物や食事ができ、体感の待ちは劇的に減る。ところが、ここで新しい問題が立ち上がる。予約券を持つ客が専用列から次々に乗り込むあいだ、通常列の客はその様子を眺めながら待つことになる。順番が見える形で破られると人は強く反応する――ラーソンが論じた行列の正義が、ここで効いてくる。見えない列は、見えている列の公平感を削りかねない。

待ちは消えない、置き換わるだけ

一方で、近年は予約券そのものを有料化する動きも広がった。追加料金を払えば待ちを買える仕組みは、運用上は合理的でも、「お金で順番を買う」という構図を可視化してしまう。理由の共有されない優先は不公平に映るという原則からすれば、有料優先は説明のつく例外と、説明のつかない差別化の境界を絶えず試している。

結局のところ、テーマパークの長い実験が教えるのは単純な事実だ。客の総数とアトラクションの処理能力が変わらないかぎり、待ちの総量は保存される。できるのは、その待ちをどこに置き、どう見せ、誰に振り分けるかを設計することだけだ。見えない列は待ちを消したのではなく、見えない場所に移しただけである。公平感の議論手持ち無沙汰の経済を重ねると、この「置き換え」の技術がより鮮明になる。

参考・出典

  1. David H. Maister, “The Psychology of Waiting Lines,” 1985.
  2. Richard C. Larson, “Perspectives on Queues: Social Justice and the Psychology of Queueing,” Operations Research, 1987.

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